【SS】追憶

周りを石壁で囲まれた空間は、蝋燭の光でかろうじて辺りをぼんやりとテラス。
この僅かな火の光ですら与えられないこともあるから、今回はまだマシだ……。
そんな事を考えながら、ぼんやりと火を眺めた。

理由は分からない。
だが定期的にこういう事がある。
できる限り僕の行動を制限しようとするかのように、拘束し、狭くて暗い空間に閉じ込めるのだ。

耳が痛くなうような静寂に、思わず目を伏せた。
誰も寄り付かず、忘れ去れられて、このまま世界から消えてしまうのではないか。

自分の中に生まれるそんな不安をどうにかしたくて、床に転がり大きく息を吐き出した。

――大丈夫だ。
きっともうすぐ、君が来てくれる。

世界が僕を忘れても、君だけはきっと……。

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